数学的な思考とは何か 長岡亮介(技術評論社)
2020年に出版された長岡先生の一般書。近況の写真を見るとお年を召されたという感じ。ワシがアラフィフで高校生の時に旺文社受験ラジオ講座で習っていたわけだからそうなるわね。本書は講演記録を文章にしたものであるため読みやすい。現在の数学教育への懸念と数学の魅力を伝える書になっている。
先生の言う数学的思考の特質とは何だろう。
1.問題を正確に捉える
案外これができないことに気づく。問題と課題をごっちゃにする場合も多い。なんとなくではなく”正確に”というのが大事。最初に解くべき内容がずれると後々までずっと迷走する羽目になる。仕事ではよく経験する。
2.的確で正確な表現
あいまいさを削り落とすという表現をされている。世の本質はいつもシンプルであり、シンプルが最も強いということ。
3.簡潔で鋭利な表現
あいまいさを簡潔にし、それを鋭利にまで昇華する努力が必要。
4.一般化、普遍化
具体例から一般次元にもっていくのが数学で、その意味では我々が日常生活で訴求しているものとは逆行しているようにも思う。数学は一般化、普遍化に重きを置く分野なのだ。
5.一般化とは抽象化
だからだんだんと数学は高度になるように思える。イメージしにくいからだ。数学は大学に行くと哲学みたくなると聞いたことある。ワシは工学部で数学を履修したのでまだ高校数学の延長、実用数学に近いものであったのかもしれない。数学科で学ぶ純粋な数学はほとんど哲学なんだろう。
6.不可視の関係を発見
表面上に見えない深い関連を見抜く。定規とコンパスによる正n角形の作図が事例。この中に2^(2^n)+1の素数多角形は作図できるという真理が埋もれている。この素数はメルセンヌ素数(名前は聞いたことある)と言われるが、メルセンヌ素数と作図の可否に関係があったということ。なるほど初めて知った。うーん、自然界の中にフィボナッチ数列が埋もれているというようなことだろうか。
7.権威主義からの自由
これは学問の世界ではよく言われることですね。権威がどうあれ真理はひとつなのだと。民間会社内では権威が幅を利かせていますが。もっとも最近はアカハラなどの問題も起こっており心配です。
いつまでも数学的な思考を持ち続けたいと思った次第。