もはやこれまで

隠遁を願うアラフィフ会社員。中学校の卒業文集で将来の夢は”何もしないひと”と書いた。あれから35年、夢も画力も変わっていない。

ジョン・マン 4青雲編 山本一力 講談社

 

 身寄りのない万次郎は船長に引き取られてともに生活することになった。その間、教会へ行ったり読み書きを学びに小学校へ行ったりする。

 

 船長は捕鯨船員としての万次郎の有能さに魅了され、小学校を出た後は航海の高等教育学校へ行かせようと考えている。この辺りも運があったのだろう。もし有能でなく平凡な少年であればそのまま孤児院にでも預けられて、その後に陽の目をみなかったかもしれない。もともと地頭や身体能力にも恵まれていたのだろう。言い方は悪いが万次郎以外の漂流した他のメンバーであればこのような待遇を受けていたかどうか。もしワシだったら精神的に参って廃人になっていたかもしれん。

 

 英語を、キリスト教精神を肌で吸収し、当時そのまま日本へ帰国できれば開明的思考を有する人間として重宝された、いや危険人物として命を狙われたかもしれない。そう考えると人間は環境や教育によって創られるのだと思わざるを得ない。もちろん十分な先天的能力あっての話という前提は付くが。

 

 毎日英語を音読し、数学物理の家庭教師までつけて挑んだ高等学校(バーレットアカデミー)に合格した場面で本章は終わってる。数奇な運命である。

 

 

 

50の手習い

 

 人と箸の持ち方が違うと気づいたのが小学校の運動会。障害物競走の一部に割り箸で卓球の球を掴んで10mほど走るというのがあった。その部分までは1番だったが球が掴めずドンドン抜かれて最下位になった。最下位になってもまだ掴めなかった。

 

 何故皆は簡単に掴むのかと思ってしばらく観察していたらどうもワシと箸の持ち方が違うということに気づいた。

 

 今まで全く気付かなかった。これまでに他を観察する機会がなかったからだ。小学校は給食だったが、パン食のためおかず用に先の割れたスプーンを毎日使っており箸を使う事はなかった。

 

 100円ショップでお箸持ち方矯正キットが売っていたので買った。対象年齢2歳とある。これで毎日メシを食べているが、指がつりそうでイライラする。たぶん半年後には華麗な箸さばきを披露出来る筈である。

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対象年齢2歳~


 

ジョン・マン 3望郷編 山本一力 講談社

 

 万次郎を乗せた捕鯨船グアム島や高知沖などで捕鯨したあとホーン岬南米大陸の下端)を経由してアメリカへの帰路へ着く。

 

 高知沖ではなんと土佐の捕鯨船とすれ違うなど故郷までもう少しという処まで接近するが、ハワイに残した仲間を慮ってかろうじて海に飛び込むのを思いとどまる。

 

 南極に近いホーン岬では万次郎の通訳(絵描き)が海へ転落。万次郎は落ちた位置を星の位置から正確に割り出し、仲間を助けるために海へ飛び込む。万次郎は捕鯨船ジョンハウランド号においてもはやいなくてはならない誰もが認める存在となっていた。

 

 この時わずか16才。凄すぎるぞ、ジョンマン。

ジョン・マン 2大洋編 山本一力 講談社

 

 救出された万次郎たちは日本に行くわけにもいかず、そのまま捕鯨船の新米乗組員green handになる。漂流者とはいえ言葉も通じず、仕事もせずただ飯食いと一部の船員から文句が出始めた頃、名誉挽回の機会が訪れる。高知では海の魚群を見張る係とまかない炊事係を担当していた事もあって地元漁師飯を船員に提供した。日々調理するコックの魚料理が不味かったからだ。

 

 万次郎が供した料理の美味しさに皆から一目置かれる。その後、見張り役としても望遠鏡を持つ船員よりも早くクジラのブローを発見し、捕獲に成功。船内での地位を不動のものにした。

 

 意気揚々と休息に立ち寄ったハワイ王国にて万次郎一行は今後も捕鯨船に乗り続けるか、ハワイに留まるかの岐路に立たされる。当時ハワイは貧しい王国(カメハメハ王国だ)である。ここで働いても帰国(国内は無理でいったん琉球行き)する船賃は稼げそうにない。かといって捕鯨船で他の船員のようにパフォーマンを出せるかどうかもわからない。なにせ一行の中には怪我人もいる。

 

 結果的に船長から期待されている万次郎のみ捕鯨船に乗り続け、他の4名はハワイに留まる選択をした。捕鯨船に乗って5人分の船賃を稼いでくるから皆で日本へ帰ろうという万次郎の言葉が涙を誘う。別れを惜しみながら万次郎を乗せた船が新たな捕鯨へ旅立つ。

英会話聞いてビックリしたこと


 youtubeの英会話番組を見ている。通常の学習用に念入りに作られた英会話番組でなく、現地の人が店に行ったり、スーパーに行ったりする際の日常の会話を多分スマホで録画し、それに字幕を付けた5分程度の動画集である。

 

 作られた英会話番組は発音やイントネーションがアナウンサーみたく活舌よく綺麗であるが実際はそんな風に会話している人は多分多くない。

 

 仕事でアメリカ在住の中国人やインド人とTeamsで打ち合わせすることがあるが(もちろん英語しゃべれる人が同席)、ほぼ何を言ってるのかわからない。

 

 このような外国人向け教材で勉強し、留学などで実際に現地に行ってみて、あまりの通じなさ、聞き取れなさに愕然とする人が多いと聞いた事もある。

 

 本場の生きた英語会話を聞くと、大した内容は話していないのだが、ほぼ聞き取ることができない。ただ字幕を見れば大体は理解できる。その後、繰り返し聞いてもやはり聞き取れない。音と文字が全然一致しないのだ。というわけでヒアリングはほぼ諦めている。というか聞けるようになる気がしない。なんせ中学生から英語勉強してきてこのあり様なのだ。

 

 今回気になったのは英語でなく、その会話の中身であった。ファーストフード店でサンドイッチやナゲット、ドーナツ、アイスコーヒーなど6品ほど注文(どうも2人分らしいが)し、お会計25ドル(3000円超え)というやり取りがあった。

 

 この金額を聞いて、えーと思ったのはワシだけではあるまい。本当に日本って貧しい国になったんだという現実を思い知らされた。日本ではファーストフード店で多少多めに注文しても1000円程度であろうに。

 

 予想ではこの先20-30年で日本円が更に弱くなるため、海外から出稼ぎで日本へ来る外国人とは逆の現象が起こると思っている。海外で働く方が稼げるというわけで、日本人が出稼ぎに行き、日本へ仕送りするというのが増えるのではないか。行先はもちろんアメリカ、東南アジアをはじめとする急成長を遂げた国である。

 

 このままだと、結構あり得る未来だな。なんか悲しくなってきた。

仮想現実の社会

 

 映画マトリックス3部作をアマゾンプライムで一気に見た。最新作マトリックス レザレクションズが公開されるのを記念し、アマゾンでこれまでの3作を無料公開していたのだ。

 

 マトリックスは1999年のSF映画である。当時はあまり仮想現実の意味が分からなかったが、今改めて見るとなかなか示唆に富む映画であると思う。今我々が生きている社会は実はコンピュータ上でプログラムされた仮想空間であり、AIが操作しているというものである。AIの手のひらの上で何も知らずに踊っているのが人間であるということだ。非常に面白い指摘である。

 

 これを見終わったとき3つの話を思い出した。一つは西遊記孫悟空の話だ。孫悟空がいくら觔斗雲(きんとうん)で飛び回っても釈迦の手のひらから外に出ることができなかったという内容。釈迦が我々を支配する神のようなもので孫悟空がその中で何も知らずに生活している人間たちに相当するというわけである。

 

 二つ目はこれまでにも書いた『胡蝶の夢』という思想である。蝶になった夢を見て目が覚めた時に、自分が蝶になる夢をみていたのか、それとも今は蝶が人間になっている夢をみている続きなのか、現実はどちらなのかよくわからない、という内容。

 

 三つめは『水槽の脳』という考え方である。1982年にアメリカの哲学者ヒラリーパトナムによって提唱された。今ある我々の世界は水槽に浮かんでいる脳が見ている夢であるというもの。今ここにいる、という感覚は五感によって体感、認識できるが、これはすべて脳に与えられる微弱な電気信号により脳自身が判断していることだ。つまり脳だけを取り出して電解液の水槽に浮かべ、電極で他の第三者が電気刺激を与えることで同じような感覚が生じるのではということなのだろう。

 

 第三者って誰?それを昔から、神とか釈迦とか最近ではAIとかと呼んできた。この辺りって考え出して深みにはまれば這い上がれなくなりそうであるが、興味深い題材ではある。結局のところデカルトの『我思う、故に我あり』に通じるものがある。そう考えると昔に言語化したデカルトってすごいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョン・マン 1波濤編 山本一力 講談社

 

 ジョン万次郎の物語。高知の漂流漁民から奇跡的にアメリカへ渡りその後幕府の通訳として祖国へ戻る生涯を描いたものである。300ページの厚みで巻数が6冊もあるので手を出せずにいたが、この度トライした。

 

 第一巻目の波濤編は万次郎を含む5名が高知沖の嵐で無人島に漂流するまでの日本側の話とアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号が出航するまでのアメリカ側からの話が交互に並行して進む。いま気づいたがジョン・ハウランド号に救出されたからジョン万次郎というのか。

 

 当時のアメリカの生活事情が詳細に記載されており興味深い。クジラ乱獲のせいで大西洋でなく太平洋にまで、しかもハワイ近海でなく日本近海まで捕鯨する必要があったこと。でも日本に近づきすぎると攻撃される危険性も知りつつ日本へ向け出航したこと。いろんな偶然と運命が重なって万次郎は救出された。偶然の力というのは不思議だという感想。