もはやこれまで

隠遁を願うアラフィフ会社員。中学校の卒業文集で将来の夢は”何もしないひと”と書いた。あれから35年、夢も画力も変わっていない。

ジョン・マン 2大洋編 山本一力 講談社

 

 救出された万次郎たちは日本に行くわけにもいかず、そのまま捕鯨船の新米乗組員green handになる。漂流者とはいえ言葉も通じず、仕事もせずただ飯食いと一部の船員から文句が出始めた頃、名誉挽回の機会が訪れる。高知では海の魚群を見張る係とまかない炊事係を担当していた事もあって地元漁師飯を船員に提供した。日々調理するコックの魚料理が不味かったからだ。

 

 万次郎が供した料理の美味しさに皆から一目置かれる。その後、見張り役としても望遠鏡を持つ船員よりも早くクジラのブローを発見し、捕獲に成功。船内での地位を不動のものにした。

 

 意気揚々と休息に立ち寄ったハワイ王国にて万次郎一行は今後も捕鯨船に乗り続けるか、ハワイに留まるかの岐路に立たされる。当時ハワイは貧しい王国(カメハメハ王国だ)である。ここで働いても帰国(国内は無理でいったん琉球行き)する船賃は稼げそうにない。かといって捕鯨船で他の船員のようにパフォーマンを出せるかどうかもわからない。なにせ一行の中には怪我人もいる。

 

 結果的に船長から期待されている万次郎のみ捕鯨船に乗り続け、他の4名はハワイに留まる選択をした。捕鯨船に乗って5人分の船賃を稼いでくるから皆で日本へ帰ろうという万次郎の言葉が涙を誘う。別れを惜しみながら万次郎を乗せた船が新たな捕鯨へ旅立つ。