もはやこれまで

隠遁を願うアラフィフ会社員。中学校の卒業文集で将来の夢は”何もしないひと”と書いた。あれから35年、夢も画力も変わっていない。

将来の志望学部の遍歴

 

 ワシは小さい頃からやりたいものがなかった。しいて言えば会社員にはなりたくないということだけははっきりしていた。なので大学を受験するときは大変困った。何学部へ行けばいいかわからなかったからだ。

 

 高校生の頃、進研ゼミの通信添削をやっていた。その中のサービスに大学と学部学科を言えば進研ゼミOB/OGの大学生から授業の時間割やどんな勉強をしているのかを封書で資料送付してくれるというものがあった。なので結構利用した。(今はネットで全部わかるよー、便利な時代じゃ

 

 最初の志望は農学部であった。理由は当時、利根川進博士が分子生物学関連でノーベル賞をとられ、バイオテクノロジーが日本で流行っていたという極めて安直な理由である。しかし、生物は高1の1学期で早々に苦手になり(ミジンコとかプラヌラとかゾウリムシとか意味不明な暗記するやつ)、化学も見たことも触ったこともない物質名や化学反応式を丸暗記するのが好きではなかった。なのでワシには向いていないと即座に思った。

 

 次の志望は文学部史学科であった。日本史マンガが好きだったので何かを発掘するのって面白そうというふざけた理由であった。大学の時間割を見るとスカスカでほぼ授業がないのは魅力であるが、たまの授業が古文史料の解読などであり、古文が超苦手なワシは向いてないと即座に思った。

 

 次の志望は天文学科であった。望遠鏡で宇宙を見て過ごすのも優雅でよいかのーと思っていた。しかし、残念ながら天文学のある大学は東北、東大、京大などハイレベル大のごくわずかで、しかも授業がほとんど数学と物理学理論であった。星のほの字もでてこない。なのでワシは向いていないと即座に思った。

 

 次の志望は半導体工学であった。今は日本の半導体は落ちぶれているが当時は日本の半導体が絶好調で理工系では難関学科の一つであった。しかし、半導体というものがいまいちよくわかっていなかった。電気電子系の内容ということだけ理解できた。別に電気や電子が好きなわけでもなかった。難度も高いし、流行っているからという理由で選ぶのはよくないと直感した。

 

 困り果てた挙句、消去法で考えることにした。まずは理系か文系か。折角理系クラスにいるんだから理系だろう。次に学部。医学が無理なのは明らか。薬学は膨大な薬品の暗記が必要と聞いているので無理。数学科は少し変人が行くところと聞いている。生物は早々にドロップアウトした。物理は実験が地味で面白くない。大学へ行けば実験が多いというではないか。

 

 男子は機械工学を選ぶ人も多かった。機械って潰しが効くといえば聞こえは良いが、要は何でも屋の印象を受けた。油に汚れた作業服よりも実験白衣の方がかっこよさそうだった。コンピュータ情報という手もあった。いまでこそITは大人気であるが当時はWindowsもなくいまいち何をするのかよくわからん学部であった。プログラム言語なら専門学校の方がいいような気もした。

 

 ということで消去法的に『化学』しか残らなかった。特に化学がとりたてて好きなわけではない。

 

 結局のところ、化学関連(応用化学、高分子化学、工業化学、材料化学)といったところをとりあえずの志望とした。実際、化学と言っても非常に幅が広い。高分子化学と材料化学って全然違うんだけど当然そんなのは全くわかっていなかった。それが分岐点でそれ以来、化学に多少関わりながら過ごすはめになってしまった。よかったかどうかはよくわからない。そもそも今は化学の仕事なんて何もしてない。

 

 こんな感じなので、中学/高校生くらいから将来の職業をこれと定め、それに向かって頑張る人をみるとめっちゃ尊敬する。大学時代に考えよう、いろんな経験をしてから決めようとしている人ははっきり言ってズルズルと決定を延命しているだけである。そう考えれば問答無用に職業が決まった江戸時代の方がよかったのかもしれん。何事も中途半端な凡人にとって、自由に考えて決めてよし、と言われるのが実は一番困るのである。