もはやこれまで

隠遁を願うアラフィフ会社員。中学校の卒業文集で将来の夢は”何もしないひと”と書いた。あれから35年、夢も画力も変わっていない。

勉強の価値 森博嗣 (幻冬舎新書)

 

 森先生はもともと名古屋大学工学部の建築学科の先生であるが、アルバイトで始めた作家業が大ヒットしたため、ミステリー作家としての顔の方が有名になってしまった。もはや働く必要がないほどのヒットぶり(確か映画化もされたはず)であったので47歳で早々に大学勤務を引退、田舎を拠点に自由気ままに暮らしている。もっともごくたまに本を出されており、新刊を図書館で見かけたので読んでみた。

 

 氏の本でミステリーは全く読んだことはないが、これまで出版された随筆やエッセイの大半は目を通している。文章が論理的で発想や考え方がユニークなのだ。一番最初にはまったのは『臨機応答・変問自在(集英社新書)』であった。これは大学講義で学生からでた質問(毎回講義の最後に質問を書かせて提出させるらしい)に対する回答をQ&Aでまとめたものである。質問といっても講義に関するものは少なく、科学全般から人生相談にまで及ぶ。この回答が非常に面白く、こんな変な先生いるんかーと、一気に魅了されてしまった。

 

 今回のお題は『勉強の価値』ということでいろいろ見解を述べているが、最も共感できたのは次の内容だ。

 教育者、指導者が決して口にしないこと、それは人には個体差があるということ。勉強もスポーツも元々才能がある者にはいくら努力しても勝てない。でも、勝てない人は人間としてダメというわけでない。ひとはひと、自分は自分、みんな自分が好きなことをすればそれでよい。

 

 大学の教育者が、それを言っちゃーおしまい、なのであるがまあ悲しい真実だ。本書の中でご本人も、努力や勉強は嫌いで何とかして勉強せずに入れる学校や進路を選択しているうちに、気づくと大学の教員になっていたという。(遠回しであるが、そういう素質が先天的にあったということを言いたいのだと思う)はっきり言ってそんな人間相手に、努力で勝てる気がしない。まあ、勝ち負けという競争概念を持ち込んでいる時点で、氏からすればそんなのどうでもいいし、興味もなしということなんだろう。

 

 最近ワシも勝ち負けはどうでもよいという感覚になりつつあるのだが、所属している会社という場所が資本主義社会に於いては勝ち負けに拘らざるを得ない場所であるため、なかなか精神衛生上よくなく、バランス保持に疲れることが多い。さっさとこんな場所から引退するに限るなー。困ったことに先生のようなヒット作がワシにはない。。。(´;ω;`)ウッ…

 

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天才君