もはやこれまで

隠遁を願うアラフィフ会社員。中学校の卒業文集で将来の夢は”何もしないひと”と書いた。あれから35年、夢も画力も変わっていない。

令和日本の大問題 丹羽宇一郎著 (東洋経済新報社)

 GW中に図書館で借りた新刊である。丹羽氏の本は以前に他にも何冊か読んだことがあるが、パワフルでエネルギッシュなおっちゃんという印象である。世の中にはパワフルでエネルギッシュな人種がいる。ワシは正直苦手なタイプであるが、このような人は生まれながらの特性なんだろうという気がする。

 

 副題が『現実を見よ! 危機感を持て!』となっている。これからの日本そして世界の問題を列挙し現実を直視して危機感を持てと述べている。いずれの問題も過去からいずれ必ず起こると言われているものばかりである。その時にも手は打てずに、後手後手でいままでズルズルと持ち越されてきた問題たちだ。現実を見よと言われてもギリギリまで見ようとしない、いや問題が起こって初めて目を向けるのは悲しいことだが人間の性である。人類の歴史を振り返っても愚行は時代と場所を変えて何度も何度も繰り返される。

 

 ワシは正直、危機感という言葉はあまり好きではない。危機感は精神論と同じ範疇に分類される。気合で頑張れ、というのと大差ない。現状が分かっていない、危機感が足りない、危機感を持てとよく言われる。どうしたら危機感を持つことができるのかと会社でもよく言われる。若手社員は意識が低いとか危機感が薄いとか。

 

 危機感は目に見える物質や物体ではない。従って、持てと言われて、はい!持ちます!という代物ではないし、はい!持ちます!という輩に限って今後おそらく持つことはない。

 

 危機感は醸成するものである。従って醸成するための背景が必要だ。背景とはその所属社会の文化であったり歴史であったり、道徳であったり、民度であったり、習慣であったり。でも確かに醸成するのを待っているだけの時間的猶予はもうないのかもしれない。

 

 多少悲観的だがこの本に列挙された問題はなるようにしかならないように思う。それが人類が意識的にか無意識的にかは別にして選択した全体意思である。本書には解決案は提示されていない。人間は流れの前には基本、無力である。

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にわ氏