徒然草に続いて方丈記の解説本を読んだ。徒然よりもさらに100年前、無常の文学で有名な作品だ。
長明の時代、京都で起こった大火事、大地震、竜巻、大飢饉、突然の京から福原への遷都。いずれも抗い難い自然や大きな権力が関与しており、個の力ではなすすべ無し、バタバタ人が死んでいくのを見て放心状態。世の中は常ならず、日々変わっていくのだ。そんな時代に身分や財産や棲む家に執着し、心荒れ、心配事を多く抱えるなんてなんて貧しい生き方であることよ、豊かさの価値を疑え、と言っている本である。
この常ならずという考え方はこの宇宙の根底を貫く法則である。仏教の諸行無常の考え方は、古代ギリシアでは万物は流転する(by ヘラクレイトス)になる。時間スパンの差はあれこの世で変わらずに存在し続けるものはいない。過去から現在そして未来へと続くと思われる時間ですら有限で終わりがあるのである。(アキレスと亀のゼノン逆説でも有名)なんて虚しい。
無常を思うと常住を希求する。永遠の生命を欲する。人間の思考や記憶を形成するものが動的平衡な挙動をとっている以上、これは自家撞着はなはだしい。
だからこそ方丈記なのだ。長明の言い分に耳を傾け、心豊かな人間らしい生き方をしよう。